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放課後、あたしはさようならの号令が終わると共にダッシュで教室を出た。そして、一目散に向かったのは天童赤鷹だった。今日の接客担当はいつものおばちゃん店員じゃなくてじいやさんだった、
あの人、接客もするんだ……
「これはこれは白鳥様、何かお菓子のご入用でございますか?」
明らかに接客マニュアル外の対応をされた。この店を余り使わないし、常連でもないあたしが受けていい対応じゃない。
「天童くんの件、聞きました」
「ああ、おフランスの件でございますか」
「どれくらい行くんですか? 一応はあちらの製菓学科で高校生やるんだから年単位ですよね?」
「最低でも二年でございますね。パティスリーでの修行は何年かかるかは分かりません。一流のパティシエになり戻ってきた暁には天童赤鷹の代表として、皆を背負って立つ立場になります、時の権力者…… いえ、日本に来る世界を背負って立つ来賓にお菓子を提供するようになりましょう」
「つまり、殿上人のような扱いになって二度と会えないかもしれないってことね」
「そうでございます。若が生まれた頃から決まっていることでございます」
なーんか、次元の違う話。
「あたしも担任の先生から聞いて慌ててここに来たんだけど、天童くんからも話を聞きたくて」
「近頃、若はおフランス行きの準備で忙しくて…… 今日はあちらで使う雑貨の購入で駅前の百貨店に……」
現地調達と言う考えはないのかな? 雑貨ぐらい現地で買えばいいのに……
「それで、フランスの方にはいつ」
「見送りとかされるのは照れくさいとかで固く口止めをされているのですが…… 白鳥様なら結構でしょう、3月の末日の夕方のフランス行きの飛行機で御座います」
「べ、別に見送りとかするつもりは」
「そうですか、てっきり見送りをしてくれるものとして教えてしまったのですが…… 今の言葉はお忘れ下さい」
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