2 柏餅を食べよう! 天駆けゆく子らよ

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生意気を良くも言う。こどもの日の縁起物なんだから我慢して食べなさい。と、言ってやりたい気分になった。 こどもの日に柏餅を食べる理由。柏葉には新しい芽が出て木が成長するまで、古い葉っぱが残り続けることから家督が絶えないことの象徴とされている。子供が立派に育つまでは父母家族が亡くなることはないと言う願いを込めての縁起物として食べられている。 あたしだって柏餅の縁起の意味は知っている。こういった願いを込めてお菓子作ってることを少しは知ってもらいたいなぁ。と、言うわけで今年も柏餅を食べておくれ、我が弟よ。 まぁ、毎年毎年おいしいおいしい言ってくれるので問題はないけど。 今年は柏餅があまりお好きではない子どものために作るのか…… あたしの心は複雑だった。 「そうだ、今年のこどもの日はお姉ちゃん帰り夕方過ぎになるけど……」 「いいよー 友達の父ちゃんに連れてってもらってプロ野球見に行くから。」 予定が埋まってて何より、あたしは安堵した。大皿の上に乗っていたフルーツも残りわずかとなっていた。 「ちょっと、あんた食べすぎよ」 「だって、美味しいんだもん」 本当に子どもってチョコレートとフルーツ好きなんだから…… あたしは残りわずかのフルーツを取られぬようにフォークを握る手を早めることにした。 その時、あたしの心の中に閃きが生まれた。あたしはスッと立ち上がり、すぐ様に廊下に出て、こばと園に電話をし、子供たちのアレルギーの確認を行った。 「いえ…… うちの子達は特にそういったことは」 電話に出たのはいかにも老翁と言った感じの声の男だった。院長さんだろうか。 「そうですか、ありがとうございます」 「材料の方ですけど…… 全部キャンセルということで」 「はい、材料の変更を変更お願いします」 「あの…… 柏餅をお作り頂けるとの話だったのですが……」 「はい、柏餅ですよ」 あたしが電話を切ってリビングに戻ると、大皿の上のフルーツはなくなっていた。 弟は口の周りをチョコレートで汚しながら、子供故に腹筋が成長しておらずに狸のように膨れた腹を擦っていた。 ちきしょう、あたしまだイチゴ数個しか食べてないのに。
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