3 おいしいおいしいポテチ

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流石はあたしの親友、見抜かれていたか。あたしは苦笑いをして首を傾げた。 「それに、あいつに「美味しい」って言って貰って何か得するの?」 あたしはリビングの照明を見上げて考えた。あいつに「美味しい」と言ってもらうことを目標にして始めたお菓子戦争だけど…… 勝って何があるのかを一切考えてなかった。 「強いて言うなら…… 自己満足? あたしのお菓子を不味いと言ったあいつをギャフンと言わせたいみたいな?」 「相手はお菓子で食べてるプロフェッショナル、花緒莉はお菓子作りこそ上手いけど、所詮は素人、プロフェッショナルの舌を満足させる必要なんてないじゃん?」 「そう…… なんだけどさぁ」 リエはあたしのことを想ってあいつから手を引くことを言ってくれているのは分かっている。このまま勝てもしない戦いを続ける哀れなあたしを見たくないのかもしれない。 こんなことが無ければ同じクラスにいながらに話をすることもなかった和菓子屋の御曹司。 別に和菓子屋の御曹司だからと言って憧れの対象でもない、単なるクラスメイトの男子。 あの時のチョコレートケーキを不味いと言われたことがショックであたしも頭に血が上りムキになっていただけだ。そう、ここで諦めてそれ以前の関係に戻ればいいだけのこと…… そんなことを考えているとリエが信じられないことを言い出した。 「彼さぁ? かなりのイケメンじゃん? もしかして惚れちゃったとか?」 あたしは思わず咳き込んだ。慌てて口を押さえる。 「な、何言ってるのよ! あたしが何であんな血液まであんこの糖分で甘くなってそうな馬鹿ボンボンに惚れなきゃいけないのよ!」 天童紘汰が目の前にいて聞いていたらビンタの四、五発は食らいそうな発言。あたしはその発言を恥じながら塩のこびりついた唇をティッシュペーパーで拭いていた。 「そう、ならいいんだけど。幼稚園の頃からずっと一緒だからさぁ…… 花緒莉にはちゃーんとした男とくっついて欲しいのよ、イケメンだけど親の金で勘違いしてるような和菓子屋の馬鹿ボンボンなんかと付き合っても絶対ろくなことないよー これ、親友からの忠告」 あたしはその忠告を甘んじて受け止めた。しかし、リエも結構口が悪くなったなぁ…… あたしは16歳になった親友の変化を初めて感じていた。それはあっちも同じ風に想っている…… かもしれない。
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