3 おいしいおいしいポテチ

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翌日、神が怒りで降らせたような大雨は嘘の様に止んでいた。通学路の街路樹からは雨露がぽたりぽたりと垂れる。空には朝の虹の橋がかかる。あたしは通学鞄の他に食材を持ち学校への道を駆けていた。 用務員さんが校門を開けると同時にあたしは校門を駆け抜け、そのまま、調理実習室へと向かった。調理実習室を管理している家庭科教師も早朝の訪問に困惑しつつも使用許可を出してくれた。 「学校で朝ごはん…… 作るの? 変わってるわねえ……」 「いいえ! お菓子です!」 あたしは瞬く間に「お菓子」を作り上げた。 皆が続々と登校を終えて教室で何やら駄弁りだす頃、天童紘汰も机に座り友人と談笑を始めていた。机の上にはポテチが乗せられ、パーティー開けにされており、談笑ついでに摘まれていた。朝ポテチとでも言うのだろうか、朝食で足りない分を補うには余りあるような気もするがまぁいいだろう。 思いついたら即実行ままに行動してみたら、朝からポテチを作ってしまったあたしに言う資格は無い。家で作ることも考えたが「作りたて」を食べさせたいということで学校で調理実習室を借りることにしたあたしは図々しい。自覚もしている。 「天童紘汰ァ! 朝からポテチは太るよ!」 そういうあたしの手には紙皿の上に盛られたポテチがある。天童紘汰は訝しげな顔をしながらあたしの顔を見る。 「お前…… もしかして朝っぱらから学校来てポテチ揚げてたの?」 「そうよ」 天童紘汰は大笑いをしだした。そして大笑いの後の残り笑いをしながらあたしに言う。 「お前、馬鹿か何か?」 あたしはムッとした。勢いでこんな事をしたあたしが馬鹿なのは重々承知している、だが、美味しいと言わせる為に手段を選ばなかった行動を馬鹿にされる筋合いはない。煽りに乗って怒りを露わにする訳にはいかない。 ここはポーカーフェイスの維持だ。 「あたし、馬鹿だもん」 あたしは机の上に揚げたてホカホカのポテチを置いた。スライスしたじゃがいもを揚げるところまではこれまでと変わらない。 「何だよこれ……」 紙皿の上に乗せられたポテチ、その上にはディスペンサーで太めの網掛け状にかけたチーズが乗せられ、さらにその上にはブラックペッパーが満遍なくふりかけられている、網掛け状にかけられたチーズには荒い粉末状のベーコンがチーズの上にくっついて乗せられている。
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