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「ありえない」
あたしはステーキハウスの玄関の戸の前で愕然としていた。ステーキハウスの戸の前には貼り紙がされていた。
「お姉ちゃん、なんて読むの?」
閉店のお知らせ
長い間ご愛顧を賜り
本当にありがとうございました
厚く御礼申し上げます
店主
「お店…… 潰れちゃった」
「ここ、結構お客さん入ってたよね? どうして?」
「知らないわよ……」
全国チェーン店のうちの一店舗が閉店する。不採算店舗だったのかな?
お昼時にこの店の前を通ることがあるが、毎回行列が出来ていた。
たまに両親と食事に来ても一、ニ時間は待たされることが普通だった。
潰れる理由はチェーン店のお偉いさんしか知らないか……
あたし達は踵を返した。市民病院近くの快気祝い客を狙ってか、この辺りには飲食店が腐るほどある。あたしが五歳ぐらいの時にその市民病院は出来た。農地用の広い土地を国が安く買い上げての建設だったらしいが詳しいことは知らない。農地用の広い土地に突然と建った白い巨塔、違和感はバリバリ。土地が広いせいか設備投資はかなりされたようで、がんセンターや新薬開発センターやコンビニまであるような大病院となった。田畑の中に悠然と白く輝き聳え立つ巨塔、その輝きに導かれてか、周りの田畑はあっという間に売り捌かれ、田畑はあっという間に埋めたてられて、テナントへと姿を変えた。一番多いのは飲食店、退院後の快気祝いで来る客が多いのかどこの店も繁盛っている。他には会社がちらほらとあるぐらいだろうか。
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