4 回転寿司でお菓子を食す

5/12

20人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
その時、店員の呼び出しが入った。 「一名様でお待ちの天童様ー」 ああ、はいはい。天童紘汰はスッと立ち上がり店員の方に小走りで向かった。 「それではテーブル席の方、ご用意しておりますのでこちらへどうぞ」 一名でテーブル席を取るとはなんなのだろうか。一名ならカウンター席に案内しなさいな。 あたしの頭の中にこんな文句が過る。天童紘汰は店員に米搗き飛蝗のように礼をすると、あたしに向かって手招きをした。何なのよ。 「お前ら、二人だろ? 俺、テーブル席取ってるから、席開いてるんだよ。座っていいぞ」 「何でそんな事すんのよ」 「このまま二時間待つつもりか?」 あたしはそのつもりだった。なぁにが面白くてあんたとフェイス・トゥ・フェイスで寿司食べなきゃいけないのよ。 「ピークタイムなんだから仕方ないでしょ?」 「いいから遠慮するなって。人の親切は受けとくもんだぞ」 あたしは弟を手招きした。人見知りはしない弟だが、さすがに知らない人と相席ともなれば嫌がるだろう。それをダシにして断ってやる。 「ねぇ、勇? この人お姉ちゃんの友達なんだけど…… 知らない人とご飯食べたくないよね?」 弟は天童紘汰を上目遣いでじーっと眺めた。天童紘汰はそれに対して軽く微笑み返す。 「別にいいよ。この人悪い人じゃなさそうだし。それよりお腹すいた」 なんと人を見る目の無い弟だ。こんな奴を悪い人じゃないと判断するとは、眼脂が溜まってるのか? 目に涙でも溜まって潤んでるのか? 家に帰ったらキーンと冷える子ども用目薬を差してやらないと。
/122ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加