5 君がいた夏祭り

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5 君がいた夏祭り

夏休みも半分を過ぎた。毎年毎年代わり映えしない夏、令和初の夏休みだがそれっぽいイベントもなくただただ過ぎ去っていく。 7月の段階で宿題は全部終えた。エアコンとサーキューレーターの合せ技で冷えに冷えた自室で黙々と宿題をこなす、正否は余り考えないが、七割か八割ぐらいは正解しているだろう…… 多分。その横では弟が夏休みの宿題をしている、十分に一回ぐらいは「ここわからない」とあたしに媚びるような目をしながら言ってくる、流石に小学校二年の問題なぞ赤子同然に処理出来るので問題はない。 時々、友人から連絡が入り色々な所へと遊びに行く、映画見たり、プール行ったり、と、言った感じだ。そして決まって話題になるのは宿題の話、あたしはもう宿題を終えたことを話すと友人はいきなり眉をひそめる、そして、あたしを媚びるような目で見つめた後に、これまた媚びるような猫撫で声であたしに言う。 「宿題手伝って~」と。 普段なら「甘えんな」とドスの効いた声で言い、拒否するのだが、夏休み故に気分を良くしてるのかついつい宿題を手伝ってしまう。涼しい図書館での宿題は捗るというもの、周りの学生も受験勉強が七、夏休みの宿題が三の割合と言ったところだろう。 8月の上旬までこんな感じの日々が続く。お盆を迎えたところであたしは弟を連れて、狐と狸が相撲を取り、小人が森の木陰でドンジャラホイと踊ってパーテーをしてそうな田舎にある祖父母の家に泊まりに行った。祖父母の家ではあたしの両親以外の親族が全員集合していた、あたしの一族は「葬式だけでみんな集まるのは味気ないし、かなしい」と言う祖父の一言で長期休暇、特に夏休みには全員集まるようにしている。それが出来ないのはあたしの両親だけだ、親戚一同も「サービス業は仕方ないね」と理解はしてくれている。
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