5 君がいた夏祭り

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「すっかり置いてかれちまったな。蒼井に連絡してくんね?」 あたしはメッセンジャーガールじゃないんだけどな。あたしは渋々とリエに電話をしようとした、だが、何やら訳の分からない通知音ばかりで電話は通じない。 「電波悪いみたい」 「祭りで電波が混線してるんだろ。俺もさっきからSNSに繋がりやしない」 つまり、連絡はとれないと言うことか。このままにしておいても電池の無駄遣い。あたしはスマートフォンの電源を切った。 それにしても、よりにもよってどうしてこいつと二人きりのシュチュエーションなのよ! あたしって案外友達に待たれないタイプ? あんな大道芸に夢中になっていたあたしも悪いは悪いけど…… 「そもそもなんであんた先に行かなかったのよ」 「るっせぇな。こんなところに一人放ったらかしにしとけないだろう」 随分と長い騎士(ナイト)気取りですこと。あたしはスッと立ち上がり、リエ達との合流に向けてその一歩を踏み出した瞬間、腹がグーと鳴った。そう言えばあたしも弟と同じく屋台目当てで朝も昼も控えめにしていた。消化の一仕事を終えた胃袋様を労わないと。 「前に向かって食べ歩いていけばどこかで合流出来るだろ」 天童紘汰が「食べ歩けば」と言ったところ、腹の音を聞かれたのだろうか。 こう言ったときはちったぁ言葉選びなさいよ……  やっぱり、こいつ嫌い。
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