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「仕方ないでしょ! 鉄砲なんて初めてなんだから!」
「はいはい、まだ四発あるから頑張れ頑張れ」
頑張ったけど、駄目だった。残り四発のコルク弾は目標に当たることはなかった。
「はい参加賞のキーホルダー!」
明らかに原価三百円以下のラバーストラップのキーホルダーを手渡された。おそらくは参加賞用に大量購入したのだろう。
「うししし」
天童紘汰は先程以上の嫌な笑顔を浮かべていた。そんな顔するならあんたがやってみなさいよ。
「おう、大将、一回だ」
「へい」
天童紘汰はコルク銃を構えた。あたしのする素人丸出しの片手撃ちではなく、右脇を開いて、そこに銃床をあて、肩と頬で固定し、引き金に手をやった。左手は銃身を握り、支えるのと、照準合わせに使い、両肘は目の前の台に三脚を作るように乗せた。海外ニュースでよく見る小銃を構える兵士の構え方そのままだった。構えだけは本格的だけど所詮は猿真似…… 当たるわけが。
天童紘汰は真剣な面持ちで引き金を引いた。コルク弾は目標の胸に直撃し、うつ伏せに倒れた…… 正義のヒーローが銃弾の前に倒れた! なんて冗談はさておき、あれでゲットと言うことか。
「はい、ざんね~ん」
射的場の主人は天童紘汰に下衆な笑顔を浮かべながら倒れた目標元の位置に戻して立てる。
あたしは思わず怒鳴ってしまった。
「何よ! 今の当たったじゃないのよ!」
射的場の主人はくくくと鳩のように笑った。天童紘汰からコルク銃を取り上げて射的場の主人の額にコルク弾をブチ込んでやろうと本気で考えてしまった。
「お嬢ちゃん、こういうのは撃ち落とさないと駄目なんだよ、撃ち倒すだけじゃ駄目駄目」
どちらも意味はあまり変わらないのに…… この手の店は「セコい」ことも含めて雰囲気を楽しむもの、だが、実際にそれをされると腹が立つのは気のせいだろうか。型抜きのミリ単位指摘のイチャモンで揉めたことを思い出す。海千山千のテキヤと何年もこの手の争いをしているが一度も勝ったことがない…… まぁ、それ含めて祭りを楽しむと言えるんだけどね……
「ようは台から落とせってことだろ?」
天童紘汰は再び銃を構えた。そして目標の足にコルク弾を打ち込んだ。体幹を崩した人形はうつ伏せに倒れ、くるくると回転し地面に落ちた。
射的場の主人はあんぐりと顎を外していた。
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