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「おい、大将。さっさと人形くれよ」
「あ…… はい……」
射的場の主人は訝しげな顔をしながら人形を拾い上げ、ビニール袋に包み、天童紘汰に渡した。天童紘汰はそれをあたしに差し出した。
「ん」
「え?」
「やるって言ってるんだよ。俺、この手の玩具興味ないし」
「折角あんたが取ったんだから部屋にでも飾っておきなさいよ」
「棚がパンパンなんだよ」
「だからってあたしに押し付けることないでしょ」
「弟が好きなんだろ? いいから受け取っておけ」
押し付けられてしまった…… まぁ、あたしも家に帰った後に弟に押し付けるんだけど。
そんなあたし達を射的場の主人はニヤニヤした顔で眺めていた。
「仲いいねぇ? 彼女さんかい?」
あたしは赤面しながらそれを必死に否定する。こんな奴の彼女なんて冗談じゃない。
「ち、違います! 単なる同級生です」
射的場の主人のニヤニヤが更に深まる。
「そうかい、あんた達のあちゅい(熱い)あちゅい(熱い)やり取り見てると、何年も付き合ったような熟年夫婦感あるぜぇ」
この人、老眼でも始まっているのだろうか。あたしは呆れながら射的場から出ようとした、天童紘汰は悪い気分では無かったのか射的場の主人に親指を立てるサムズアップのポーズを取っていた。
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