5 君がいた夏祭り

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こんなことを話しているうちに神社の鳥居の前に辿りついていた。鳥居の前ではリエ達があたし達を待つように仁王立ちをしていた。その顔は仁王ままに怒っているようだった。 そう言えば別れてから数時間連絡してなかったな…… 悪いことをしてしまった、でも携帯電話が使えないんだから仕方ないでしょ? 「何回電話したと思ってんのよ」 それ、こっちのセリフ。電波が混線してて電話通じないから電源切ったけど、それが駄目だったか…… 次に電源入れたら鬼電後で着信履歴に並ぶ「エリ」の名前で腰抜かしそう。 「仕方ないじゃないのよ…… 祭りで電波通じる事自体が稀よ」 「そうそう、携帯会社も臨時の中継局出してくれればいいのに」 全国的に名の知られた祭りじゃないんだから…… 携帯会社もこんな一地方都市の夏祭りごときに中継車出すほど暇じゃないだろうし。 「俺ら、二人きりだったけど楽しかったよなぁ?」 天童紘汰があたしに同意を求めた。確かに楽しか…… いや、認めたくない。 「あたしらもあたしらで楽しかったし…… まぁいいか」 エリは微笑みながら天童紘汰に返した。そしてすぐにあたしを少し離れた場所に連れ出した。そして、小声ながらもドスの効いた声で耳打ちをした。 「あたし、あんたいなくてつまんなかったんだからね」 嫉妬…… なんだろうか。確かにリエとはどんなクソイベントに参加したとしても一緒にいるだけで楽しいと思える関係だ。リエとはぐれてあいつと二人きりになったときに「つまらない」と思ったなら、それはリエがいないからだろう。しかし、あいつと二人でいる間は認めたくないが心から楽しいと思ってしまった。リエはあたしがいなくて男子とのグループ行動…… ワイワイガヤガヤと楽しんでいると思ったが……  あたしがいなくて楽しめなかったのか…… 悪いことをしてしまったな…… その埋め合わせはいつかしなくては。
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