6 頭に唐菓子の詰まったような女、莫迦梵梵たる男

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末摘花(すえつむはな)のことはともかくとしまして、平安時代のイケメンの話です。顔が下膨れにしても、和歌を詠めるようになるにしても貴族のお金持ちでなくてはいけません、先程の福来病は別にしていっぱい食べて太ることで下膨れの顔となります、当時の日本人でいっぱいものを食べられるのは貴族ぐらいでした。和歌を詠むにしても、ひらがな・カタカナ・漢語と言った教養が必要です、教養を得ることが出来るのはやっぱり貴族ぐらいでした」 ようは貴族であればイケメンってことか。それは現在もあまり変わらないのかもしれない。 見た目や教養をカネで買っているのだから…… 良い言い方をすれば自分に投資して自分を高めると言ったところか。 「いつの時代も嫉妬や妬みはあるものです。平安時代の平民の記録はほぼゼロで残っていないのですが…… 平安貴族から見た平民の記録は若干残っています。私の中で印象に残っている一言がこれです、あ、原文ママだと何を言ってるのか分からない方が多いと思いますので現代の言葉で言いますね『京の都は羅城門の近辺に住む民は貴き者貴族を莫迦にしていると聞く、実にけしからんことよ、そして最近では税金(租庸調)を徴収しての贅沢で優雅な暮らしをする我々貴族の男子(おのこ)が幼い時には(ボン)と呼ぶことを知ったことで、侮蔑の意味を込めて坊坊(ボンボン)と呼んでいると聞く、何故に二回繰り返すのかは分からない。下々の者のやることはわからん。近頃ではこの二つを合わせて我々貴族の男子(おのこ)を『莫迦坊坊(ばかぼんぼん)』と呼んでいるとのこと、実にけしからん、だが、これはこれで面白い。親の金で勘違いしているだけの愚かな貴族に対しての新しい呼び名にしてやろう。いとおかしいとおかし』と、まぁ今も使われるお金持ちに対しての罵倒語である馬鹿ボンボンという言葉は平安時代から使われていた言葉だったわけですね」 こんな昔からあった言葉だったのか。あたしは微睡みが一瞬で覚めるぐらいに驚いた。 あたしがいつも馬鹿ボンボンと罵倒する相手の天童紘汰は机の上に突っ伏し、すーすーと寝息を立てていた。 「ところがその貴族、馬鹿にされていることが我慢出来ません」 馬鹿な奴ほど馬鹿にされると我慢されないのは今も昔も同じか。 「坊坊(ボンボン)の字を梵の字に変えて読むようにしたのです。梵と言う字は仏教においての創造主ブラフマーを意味します」 古文の先生は黒板に大きく 「莫迦梵梵(バカボンボン)」 と、書いた。
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