7 開けてびっくりな缶詰

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「そういえばあなた達、仲良かったわよね? 帰りにプリント届けてくれないかしら?」 あたしは必死に否定に入った。誰があんな奴と仲が良いものか。 「いえいえいえいえいえいえ! 単なるクラスメイトでそう仲いいってわけじゃ。あ、そうだ! 梟首くんなんか同じ陸上部で仲いいですよ」 「駄目よ、梟首くんは奨学生で部活の後は週三でバイト入ってるのよ。確か空港にあるつばめ寿司さんだったかな?」 アルバイト、始めたんだあの子…… 応援してやりたい気分になった。 「ま、そんな訳でさぁ…… プリント届けてあげてくれないかしら。うちの学校からいける大学や専門学校の推薦枠取れるようにとりなしてあげるから」 別に推薦枠どうのこうので動く話じゃない。今のあたしはあいつと付き合いが全く無い、だから行く筋合いなど全く以てない。 「あ、家は天童赤鷹本店の店員さんに言えば通してもらえるから」 これだけ言い残してたまこ先生は教室から去っていった。有無もなし、是非もなし、プリントだけあたしに押し付けてしまった。 誰かお供でも連れて行こうと思ったが、今日は生憎と皆用事があるとかで中々お供が見つからない。一番アテにしていたリエも今日はフランス語の駅前留学でさっさと帰っていた。 「仕方ない、あたし一人でいくか……」 あたしは足が重いながらも天童赤鷹本店に向かった。 『次は、天童赤鷹本店~ 天童赤鷹本店~ お降りのお客様はブザーを押してお知らせください』 バス停留所の名前にもなっているのか。凄い話。あたしはそんな事を思いながら路線バスから降りた。目の前に広がる純和風の店舗の前に降りた、確か以前に来た時は親戚の退院祝いのための羊羹か何かを買った時以来だろうか、天童紘汰が店の奥で偉そうに指示しているのを見たのがあたしにとっての天童紘汰とのファーストコンタクトだったはずだ。あちらは気がついてすらいなかったと思う。
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