1 くらえ! あたしのチョコレートケーキ!

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友人二人は完全にあたしの味方、心の中でガッツポーズを取った。そうよ、やっぱりあたしの作るお菓子は美味しい! さぁ、あたしの凄いチョコレートケーキを食べなさい! あいつはチョコレートケーキを口に運んだ、一口、二口、三口とゆっくり口の中に入れていく。さっき、友人はあいつに謝ることを促したが、あたしとしては謝るよりも「美味しい」の一言が聞きたい。さぁ! 美味しいの一言を! あいつはチョコレートケーキを全部食べ終えた。ハンカチでココアパウダーのついた指先を拭きながら信じられないことを言い放った。 「やっぱり不味い」 あたしは世界が崩壊したような気分に陥り、肩を落とした。あいつはそんなあたしを一瞥もせずに去ろうとした。このまま去られるなんて冗談じゃない! あたしは気力を振り絞り、あいつに詰め寄った。 「何よ! 何処が不味いのよ! いいなさい!」 あいつはふぅとため息を吐いた。ため息を吐きたいのはこっちだよ!  「確かに甘さは増したけど、それだけ。不味いのに変わりはない」 苦いと言われたから甘さを増したのにこの言い草。あたしは完璧に馬鹿にされていると感じた。入学以降、今日初めて話をしたような相手にここまで言われなければならないのか。 こいつは単なる悪意であたしにこんなことを言っているとか思えなかった。 「あ、あのさぁ…… 白鳥さん? こいつ、多分チョコ嫌いなだけだから気にしない方がいいよ」 友人の方からフォローが入った。そうだ、あたしはこの可能性を考慮しなかった。あいつがチョコレートを嫌いと言う可能性を考えなかった自分を愚かしく感じた。すぐさまにあたしは「仕方ない」と言う結論を導き出して精神的に合理化を図ろうとする。だが、その精神的合理化はあいつの一言で粉々に砕かれてしまった。 「いや、俺、チョコ好きだけど。むしろあんこの甘さより好きだよ」 「だったらどうして白鳥さんのケーキを不味いって言うんだ!」 「不味いモンは不味い。それだけ」 「お前ひょっとして和菓子屋の息子なのに甘いもの嫌いとか」 「いや、甘いものも苦いものも大好きだけど。俺、これから店だから……」 あいつは足早にその場から去ろうとした。あたしはと言うとあいつの無慈悲な口撃に耐えることが出来ずに涙目になっていた。友人二人はそんなあたしに気を使いフォローを入れる。
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