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8 聖なる夜に丸太を叩き込む
夏は短いが、秋も短い。瞬く間に12月になり、町中では冷たい空気の中、イルミネーションが輝くようになり、クリスマスのデコレーションが飾られるようになり、BGMもジングルベルか赤鼻のトナカイがエンドレスリピートされるようになる時期のこと、あたし達友人グループはクリスマスの予定について話し合っていた。
予定を話すと言っても彼氏持ちは生憎といない……
「クリスマスは家族で過ごすものよ」
確かに正論、でも負け犬理論に聞こえるのは気のせいだろうか。あたしも家族で過ごそうと思ったが、両親は例によってクリスマスにサービスをする側の職種のために深夜まで帰らない、弟は子ども会のクリスマスパーティーに参加とのことで今年はケーキいらないと無慈悲な通告をされてしまった。
毎年お店にも負けないクリスマスケーキを作るのも疲れていたところだし、丁度良かったかな…… 今年はエリを家に呼んでリビングでコンビニで買ったホールケーキでも食べてようかな…… プチパーティーでもしようかな?
あたしはエリを誘おうとした。
「今年はフランス語の駅前留学の子達のパーティーなの」
エリは予定があるのか…… 一人でクリスマスに不釣り合いなサスペンス観ながら(何故にクリスマスに殺伐としたサスペンスやるのよ)シャンパン飲んで、ホールケーキを贅沢に一人で食べるのもいいかなぁ……
彼氏なしアラサー女子のクリスマスを先取りしてるみたいで何か虚しい……
そんな中、意外な男があたしに話しかけてきた。
「白鳥さん」
「あら、梟首くん」
「つかぬことを聞くんだけど…… クリスマスは予定埋まってるよね?」
痛い所を突かれた。今どきの女子高生がクリスマスの予定空白だと何を思われるか分からない。かと言って予定が埋まっていても尻の軽い女と思われかねない。頭は軽いけど尻が軽いつもりはない。
「……」
あたしは黙り込んだ。とりあえず、要件を先に聞いとかないと。
「24日の夜? この学校の体育館借りてうちの施設のクリスマスパーティーやるんだけどさあ……」
ああ、こばと園もクリスマスパーティーをやるのか。うちの学校も体育館提供するなんて案外太っ腹ねぇ。これも社会貢献の一つか。
「それでさぁ、子どもたちのためにケーキ作って欲しいんだよ」
「あれ? ケーキ屋さんに頼めないぐらい窮状してるの? こばと園」
「いや、そういう訳じゃないんだけど…… 毎年頼んでるケーキ屋さん潰れちゃってさぁ……」
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