8 聖なる夜に丸太を叩き込む

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まずは、卵を卵白と卵黄に分けないと。 あたしはボウルの上で卵を二つに割って卵黄を二つに割った殻に入れて、戻してを繰り返す。すると、溢れた卵白が下に落ちて卵白と卵黄に分けられる。 これで卵白と卵黄がそれぞれ分けられてボウルの中に入った。 「エッグセパレーター使えばいいのに」 うるさいな。その場に無いものを使えとは無茶をよくも言う。 天童紘汰の言葉を無視して、卵白と卵黄にそれぞれ、グラニュー糖を入れた。 「天童くん? 卵白をメレンゲにしてもらえる?」 フランスに留学してお菓子作りをしていたぐらいだ。メレンゲ作りを手伝ってもらったところでバチは当たるまい。 「やだよ、あれ疲れる」 あたしより腕力のある男がそれを言うか。 「泡立て器の機械があるからさっさとメレンゲにしてもらっていい?」 「へいへい」 天童紘汰がメレンゲのかき混ぜを行っている間、あたしは卵黄を混ぜた。卵黄が液体とも個体ともつかないぐらいになった辺りで、かき混ぜが終わり完成したメレンゲの半分を混ぜる、その二つが丁度良く交わった辺りで、残り半分のメレンゲを入れ、かき混ぜた。 そして、かき混ぜたものに薄力粉とカカオパウダーを更に混ぜ合わせて、生地は完成っと。 「天板に入れて……」 生地を天板に流し込むように入れた。それからパレットナイフを使って全体を平たくならして、予熱しておいたオーブンの中に入れると。 大体、8分。焼いている間にチョコレートクリームを作る。細かく刻んだチョコレートと、生クリームをレンジで溶かして混ぜる。世は科学万能の時代、個体がドロドロした個体になるまで一分もかからない。更にその溶かしたものを生クリームにそのまま混ぜて、木の表面の色合い(好みの問題だけど)になるまで混ぜると…… 白樺の木を思わせるようなら混ぜるのは控えめ(そもそも白樺の木にするならホワイトチョコレートを使うよ!)まぁ、今回は普通の丸太にするので薄めの茶色にするまでに留めておく。 8分後、オーブンから焼き上がった生地を出す。それから生地をひっくり返して、裏面に出来たばかりのチョコレートクリームをパレットナイフで塗り拡げた。チョコレートクリームを塗り拡げた一面の上にフルーツを乗せる。今回はスタンダードに四等分したイチゴだ、チョコレートの甘さとイチゴの酸味の反作用で美味しく感じる最高の組み合わせだ。当日は何か別のフルーツでいいかも知れない、チョコレートとフルーツは合う率が高いのはチョコレートフォンデュで実証済みだ。 よいしょ、よいしょ、よいしょ、あたしは寿司の巻き物の要領で生地を巻いた。重量変化が起こるせいか両端からポロっとイチゴとチョコレートクリームがこぼれ落ちる。その分を切り落として丸太の切断面のように見た目を整える。 この時点でロールケーキとしては完成だ。だが、ここからがブッシュ・ド・ノエルの本番。ロールケーキの一割か二割程に包丁を入れて切る、その切った分を横に寝かせたロールケーキの上に乗せ、切り株にする。そして、チョコレートクリームを全体に塗り拡げる。これで切り株部分は接着完了。仕上げはフォークで全体的にスクラッチ(引っかき)して、木目調の筋を付けて……  不自然にならないように時々力の入れ加減を変えて…… 中のスポンジがはみ出ないようにやさしく…… やさしく…… 最後はイチゴで飾り付けをして(もみの木の葉っぱやサンタクロースのお人形さんは当日までのとっておき) 完成(できあがり)
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