8 聖なる夜に丸太を叩き込む

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「ねぇ、これでブッシュ・ド・ノエル作りたいんだけど」 「え?」 天童紘汰は「こいつ何言ってるんだ」と、言いたげな顔をしてあたしの顔を見た。 そして続けた。 「おいおい、この前子どもたちはこれ嫌いだって聞いてるだろ?」 この前って随分と遠いこの前の話じゃない。あたしはそれに構わずにトラックの中に入り冷気で冷えた段ボールを一箱持ち上げた。流石にぎっしり詰まっているせいか重い。 「これ、全部買いたいんだけど、領収証学校で切ればいいのかな? それともこばと園?」 「いいよ、タダで。下手したら25日には廃棄するかもしれないもんだったし」 「え? まだ賞味期限も消費期限もまだまだあるよね?」 「これにも味のピークって奴があるんだよ。クリスマスケーキだって25日過ぎたら安くなるし、味だって落ちるだろ?」 昔は25歳過ぎて独身の女は売れ残りの意味を込めて25日のクリスマスケーキと揶揄されていた。 この晩婚化の時代でこれを言う人は絶滅したと聞く。 それはともかく、タダで材料をゲット出来たのは幸いだ。 「じゃ、これ全部ブッシュ・ド・ノエルに使うから荷降ろししましょ」 「本当に大丈夫かよ、確かにこれでブッシュ・ド・ノエルを出す店はあるけど……」 「へー、あるんだ」 あたしは天童紘汰と一緒に荷降ろしをする。そんな中、一つだけ違う段ボール箱を見つけた。 「これは? 一個だけ箱が違うけど」 「ああ、俺が病気の時にお得意さんが送ってきたんだよ。お前だって知ってるはずだろ?」 そう言えばあの時見たものか。あたしは納得した。そして、更に心の中に電流が走る。 「これも使おうかな? でも賞味期限大丈夫かな?」 「封さえ開けなければ5年は保つぞ。常識じゃないか」 一般常識では無いと思うけど、いいことを聞いた。あたしはこれを使うことにした。 それから数時間をかけてあたし達はこばと園の子どもたちのブッシュ・ド・ノエルを完成させた。あたしは弟や家族のお土産分をちゃっかり確保している。 あたしやこばと園のスタッフが落ち着いたところで、クリスマス会がしめやかに開かれた。
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