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1 くらえ! あたしのチョコレートケーキ!
「うわ、不味っ……」
そいつはあたしが家庭科の調理実習で作ったチョコレートケーキを一口食べてそう言い放った。
周りの男子は一口食べただけで
「甘くて美味しい!」
と、絶賛するのに何でよ!
あたしはそいつに詰め寄り、胸ぐらを掴んだ。
周りを囲むあたしの友達も味方をしてくれる。
「人が一生懸命作ったものを不味いって言うなんてサイテー!」
友人たちはそいつに非難の言葉を浴びせた。だが、そいつは悪びれずに言い放つ。
「不味いものを不味いと言って何が悪い。テメーのチョコレートケーキは現実みたいに苦いんだよ!」
そいつはあたしの細腕を乱暴に振り払い、教室を後にした。
あたしは呆然としてその場に蹲り小学校低学年の女子のようにわんわんと泣いた。
そんなあたしを心配したのか友人達があたしを取り囲み、肩を叩いたり、頭を撫でるなどして慰める。だけど、そんなものは慰めにもならない。
あたしは昔からお菓子作りが趣味で、その趣味は小学校低学年から続けており、高校生になった今でも休日にはほぼ一日家に籠もってお菓子作りをするぐらいの凝りようだ。
そんなわけであたしは自分の作るお菓子に絶対的な自身を持っていた。高校卒業後には調理師専門学校のおやつ科(あるの?)を受けようと真剣に思っているぐらいだ。
そんなあたしが作ったチョコレートケーキを不味いと言い放ったあいつ……
絶対に許せない!
あたしの闘志は先程までチョコレートケーキに使うチョコレートを溶かす時に使う鍋と同じように熱くなっていた。
「もう気にするのやめなよ、あいつ、舌が腐ってるのよ」
友人はこう慰めるが、その声はあたしの右耳から左耳をすーと通り抜ける。
あたしは何か手順を間違ったのかと思い、放課後に再び同じ手順でチョコレートケーキを作ることにした。
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