思い出のクライマックスジャンプ

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「いや~でも大分覚えてきたね、リューヘイくん」  にんまりと笑いながら、ナルコさんが言った。  この珍妙なやり取りは、特撮初心者の俺の為に、ナルコさんが考案した『平成仮面ライダーキャッチコピー当てクイズ』だ。  各ライダーの名前に合わせ、放送時のキャッチコピーを言うだけの単純な問題なのだが、これが意外と難しい。  平成一期(2000年~2009年)は、小さな頃観てたからなんとなく解るが、平成二期(2010年~2019年)になるとさっぱりだ。  この間まで観てた『仮面ライダージオウ』しか、まともに解らない。  まあ、それでもかなり覚えた方だとは思うが…。 「それでも、平成ライダーの名前は全部言えるようになったもんね」 「あはは…ナルコさんのおかげでね」  ここ最近、俺達は昼休みの度に屋上へ繰り出して、こうして二人で話をしている。  憧れの女の子と二人っきり…と考えると素敵なシチュエーションだが、やってることはただの特撮トークだ。  尤も、俺が仮面ライダー以外知らないせいか、他の特撮の話はしていない。  合わせてくれてるみたいで、ちょっと申し訳ないが、ナルコさんのことだ。  そのうち話してくれるだろう。 「リューヘイくんが好きなのは電王だっけ?」 「うん、電王。配信あったから改めて観たけど、昔観た時とかなり印象違ったなぁ」  考えてみれば、10年以上前の番組なんだ。  そりゃあ記憶だって曖昧になるし、感性が変わってるから、当時とは違う感想も出てくる。  当たり前のことだが、なんだか新鮮な気持ちだった。 「それも特撮の醍醐味だよ!思い出は思い出で大事だけど、新しい発見も大事だからね!」  ナルコさんが嬉しそうに笑う。  きっと、何回も観返しているであろう彼女らしい言葉だ。 「確かに。小さい頃は明るくて楽しい話だと思ってたけど、今観たらけっこうシリアスな場面もあってびっくりしたよ」
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