思い出のクライマックスジャンプ

11/11
前へ
/73ページ
次へ
 映画が終わった。  俺は顔を伏せたまま、動けないでいた。  顔を上げられない。多分、物凄く情けない顔をしてると思うから。  流石に見せられないよ。  憧れの女の子に、こんなぐちゃぐちゃな泣き顔なんか。 「…はい」  ナルコさんがティッシュを差し出す。  気を遣っていてくれてるのか、ちょっとだけ視線を逸らして、俺の方を見ないようにしてくれている。 「涙はこれで拭いとき…って、キンタなら言うと思う」  俺はティッシュを受け取って、涙を拭いた。 「…ネタバレしなくて良かったでしょ」 「…うん」  ありがとう、ナルコさん。  最初から知ってたら、多分こうはならなかったと思う。 「最終回でさ…いつか、未来でって、良太郎が言ってたんだ」  その言葉とラストシーンだけは、いつまでも覚えていた。  小さな頃に感じた寂しさも。 「未来で会えたよ。また、良太郎に」  俺の言葉に、ナルコさんは満足げに頷いた。 「よし!もう一度観よう!今度は楽しくやろうよ!」 「えっ…?もう一度って…今観たばっかり…」 「いーからいーから!二回目には二回目の発見があるから!」  無邪気にBlu-rayを再生するナルコさんを見ていたら、なんだか俺まで楽しくなってしまった。  …この後、平成ジェネレーションズばかり何回もリピートし、『地獄の平ジェネマラソン』として俺の記憶に深く刻まれることになるのだが、それはまた別の話である。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加