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「ごちそうさまでした」
陽子が、食卓に向かって手を合わせる。
彼女の朝食は、いつも静かだ。
陽子が、まだ子育てで忙しかった頃。
朝早くに夫を仕事に送り出し、続いて時間差で起きてくる三人の子供達に食事を出し、
自分が朝食を食べるのは、いつも一人だった。
それが、習い性となるで、陽子は朝食の間にお喋りをすることは滅多にない。
「あら……、また、ダンマリで食事をしちゃった。しょうがないわね。折角、啓之さんが
側に居るのに」
「いいんですよ。普段の生活習慣を守った方が」
「でも、あんまり喋る機会がないと、早くボケるって言われてない?」
「でも、朝食以外では、よく喋ってるでしょ」
「それもそうね……」と笑いが零れる。
「洗い物は、いつものように置いといて下さい。私の方でやりますから」
「お願いするわ」
「今日はどういう予定です?」
「何もないけど………。そうね、少し庭いじりでもしましょうか」
「分かりました。では、私は風呂窯掃除をする事にしましょう」
「そうね、お願いします」
そんなやり取りを遮るように、電話の呼び出し音がなった。
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