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社長が目を閉じたままで口を開く。
「予めユーザー自身に、ハイジィのAIを教育して貰う。というのはどうかね?」
「逆転の発想ですか。いいアイデアだと思います。ですが、AIのカスタマイズは高度に
専門的な知識が必要です」
「そのためのエンジニアを、ユーザーの元に派遣する。あるいは、パソコン教室のような
ものを設けて、AIカスタマイズ方法を伝授する……」
「なるほど……。早速、検討してみます」
方向性が見えて来た事で、二人の顔が綻ぶ。
と、一転。社長が真顔に変わる。
「ところで、森永くん。いま言った、カスタマイズの伝授の話なのだが、最初の一人は、
私にして貰えないだろうか」
「社長ご自身ですか? それは、構いませんが……」
「ありがとう。それから、もう一つお願いがある。私が、ハイジィのカスタマイズに取り
組んでいる事は秘密にしておいて貰いたい。社内に対しても、家族に対しても……」
「……それは、何故でしょうか?」
「その理由は、……時が来たら、話す」
森永重役が、目を閉じたままの社長の顔を見据える。
暫くして、
「承知しました。今のお話しは、持ち帰って検討します」
と森永重役が部屋を出て行った。
会議室の残された社長が、目を閉じたままで呟いた。
「私の命が……、あるうちに……」
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