第二章 秘密

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 社長が目を閉じたままで口を開く。 「予めユーザー自身に、ハイジィのAIを教育して貰う。というのはどうかね?」 「逆転の発想ですか。いいアイデアだと思います。ですが、AIのカスタマイズは高度に 専門的な知識が必要です」 「そのためのエンジニアを、ユーザーの元に派遣する。あるいは、パソコン教室のような ものを設けて、AIカスタマイズ方法を伝授する……」 「なるほど……。早速、検討してみます」  方向性が見えて来た事で、二人の顔が綻ぶ。  と、一転。社長が真顔に変わる。 「ところで、森永くん。いま言った、カスタマイズの伝授の話なのだが、最初の一人は、 私にして貰えないだろうか」 「社長ご自身ですか? それは、構いませんが……」 「ありがとう。それから、もう一つお願いがある。私が、ハイジィのカスタマイズに取り 組んでいる事は秘密にしておいて貰いたい。社内に対しても、家族に対しても……」 「……それは、何故でしょうか?」 「その理由は、……時が来たら、話す」  森永重役が、目を閉じたままの社長の顔を見据える。  暫くして、 「承知しました。今のお話しは、持ち帰って検討します」  と森永重役が部屋を出て行った。  会議室の残された社長が、目を閉じたままで呟いた。 「私の命が……、あるうちに……」
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