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これはやっぱりTシャツを回収しなければと焦るのに、玄関を通過した彼は先に立ってどんどんリビングに進んでいく。私は慌てて彼を追いかけた。
「これ、前回みたいな枝物じゃないけど使うか?」
彼がそう言いながらテーブルの上に包みを置く。
「ありがとうございます」
「ふぅ……疲れた」
彼は早く着替えたかったらしく、ネクタイを外しながらソファーの上に置いてあったTシャツに気づいて手に取った。
「洗濯してくれたんだな。ありがとう」
「それがその……」
私が口ごもっている間にTシャツを広げていた彼の手が止まった。もう手遅れだ。
「あの、今回はわざとじゃないんです」
「今回は、とは?」
「いや別に」
直立して答えた私と、片手にTシャツをかざしている彼との間に沈黙が落ちる。
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