黒歴史の男

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「で、橘部長との見合いだと思って張り切ってやってきたわけだな?」 わかりきったことをわざわざ言わなくたっていいじゃないの。 空になってしまったカフェオレのカップを置き、開き直って彼を見据える。 「その通りです。精一杯めかしこんでね」 挑戦的に顎を上げた私の顔面に飛んできたのは、四年前の黒歴史を彷彿とさせる嫌味だった。 「目的は?」 また出た、この質問。 私のことを打算的な女だと思っているならそれで結構だ。 負けじと私も四年前と同じ調子で応戦した。 「わかってるなら、話があった段階で断ればよかったじゃないですか」 彼の唇の端がおかしそうに持ち上がる。 「それは無理だろう。白川花壇は古くからの付き合いがある大切な取引先だ」 よく言うよ白々しい、と内心で毒づいた。 どうやら彼は私から断らせるつもりのようだ。 そこで私はあることに気づいた。 このお見合いは彼の罠かもしれない。 彼は私の非礼を誘うことで、橘グループから白川花壇を排除するつもりなのだ。
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