そうはさせるものですか。
私はお嬢さまらしく悠然と微笑んだ。
「たしかに、結婚はビジネスですものね」
社にたかる小バエを追い払うのが職務なら、きっとこんな台詞を言ってのける女は大嫌いだろう。
どうよ、と期待して彼を見たけれど、彼は表情ひとつ変えずにコーヒーを飲んでいて、なんの反応もない。
焦った私は手っ取り早くこの話の収拾に入った。
「とにかく形だけは会った訳だし、これで義理は果たせましたよね? フィーリングが合わないとかなんとか適当に理由をつけて、お互いに……」
「いや、どうするかな」
彼は腕組みをしてニヤリと笑った。
手のひらで好きに転がされている感じがなんとも癪に障る。
彼を睨みつけたあと、あちらから断らせる作戦を必死で考えながら、沈黙凌ぎに水を飲む。
でも着付けが強すぎるところに水分を摂り過ぎたせいで、気分が悪くなってきた。
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