黒歴史の男

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「二時間ほどしたら迎えに来る。それまで横になってろ」 ところが、そんな事務的な伝達事項とともにベッドが揺れ、私の上から彼の気配が消えた。 目を開けると、視界にはただ白い天井が広がっている。 「トイレは手前のドアだ。着物だから早めに行けよ」 なんとも 色気のない助言とともに彼の足音が遠のき、続いて重いドアが閉まる音が聞こえた。 その間私はなにも反応できず、丸太のように転がって天井の火災報知器を凝視していた。
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