おめでたい不祥事

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「なにか裏があると思わない? 入社面接のときだって白川のことを小バエみたいに言ったのよ」 「たしかに鷹取部長は社長の参謀役だから、なにか思惑はあるのかもね」 私より会社の中枢に近い部門にいる真帆の意見はなかなか鋭かった。 「社長は白川花壇に好意的だって聞いてるよ。で、乃梨子の話だと鷹取部長は白川嫌いなわけでしょ。だとしたら、もしかして橘部長と白川家が結びつかないよう、縁談を邪魔したとか? 社長に進言すると角が立つじゃん」 「なるほど……」 納得したあと、むらむらと腹が立ってきた。 「橘部長と結婚できたかもしれないのに! よくも邪魔してくれたわね」 「いやいや、あくまでも憶測よ。もしかして本当に乃梨子のこと想ってるのかもよ?」 真帆もそんな意見に説得力がないことはわかっているらしく、笑いを堪えて頬がぴくぴくしている。 「私のこと好きなわけないでしょ。あの性格だから妨害説のほうに決まってる」 「どうせなら誘惑して本当に結婚しちゃえば? 瓢箪から駒じゃん」 そう言われてぐっと詰まる。 ベッドの上で私が〝誘惑〟しようと、あの男がびくともしないのは実証済みだ。 「そんなことにはならないわよ」  私はカップ酒を一気に飲み干すと、テーブルに勢いよく置いた。 「絶対に負けないから」
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