同棲スタート

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エントランスでためらっている間に時間はどんどん経ち、到着を予告していた時刻を過ぎてしまった。 出入りする住人に怪訝そうに見られるので、ようやく意を決し、暗証番号を押してエレベーターに乗り込む。 彼に指定された最上階に到着した私は、開いたエレベーターのドアの向こうに広がる眺めに思わず呟いた。 「ここはどこ……?」 薄暗い照明に照らされたそこには細かな玉砂利が敷き詰められ、飛び石が配された苑路が続いている。 かつて白川の造園事業が盛んだった頃に屋上庭園を手がけたことはあったけれど、こういう個人向けの屋内石庭は初めて見た。 世の中にはこんな贅沢があるのか……。 呆気にとられている間にエレベーターのドアが閉まってしまい、慌てて開のボタンを押す。
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