/315ページ
彼の背後に広がるのは宝石を散りばめたような夜景。
どうしてそんな目で見つめるの?
まさかこんな油断してるときに、まさか──。
「……むぐっ」
お見合いのときに続き、またも瞼を閉じた私の唇の隙間に押し込まれたのはチョコレートだった。
「お疲れのチョコ」
彼は素っ気なく言い、ワインを開け始める。
「今、手を使えないだろ?」
優しさなのか私に恥をかかせたいのかといえば、絶対に後者だ。
私ったらいったい何度引っかかれば気が済むのだろうか。
「手を洗ってきますっ」
しばらく口をモグモグさせてようやくチョコレートを飲み込んだ私は、真っ赤な顔で洗面所に逃げ出したのだった。
最初のコメントを投稿しよう!