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「そんなところでいったい何をやってるんだ? 気でもふれたのか」
「砂利観察ですよ」
むっとして言い返したけれど、まあ普通の女子は砂利観察などしないだろう。
「ここ、水を撒いちゃだめですか? 雨が降ると黒玉石は綺麗になるんですけど」
「天井をぶち抜きたいと言われるよりはいい」
婉曲すぎてわかりにくいけれど、彼的には許可してくれたらしい。
少しうれしくなり、玄関に向かう彼の背後で飛び石を跳ねるようについていく。
「排水溝が一か所しかないから、あまり大量に撒くなよ」
「はい。……あの、おかえりなさい」
「ただいま」
タイミングのずれた私の挨拶に、彼は背中越しに付き合ってくれた。
そのとき私は彼の手に小ぶりな紙の包みがあることに気づいた。昨夜は茄子料理を出したし、昼間は社員食堂で無視してしまったのに、蓮司さんはまた花材を持ち帰ってくれたらしい。
同棲開始から二週間。口は悪いけれど、たまにこうして優しいから、そのギャップに私は右往左往してしまう。
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