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同棲スタート
お見合いから十日後。
私は都内一等地にある高層マンションのエントランスにいた。
手にしたスマートフォンにはエレベーターホールに入るための暗証番号が表示されている。
ついに同棲スタートの日を迎えてしまった。
まるで虎の穴にでも入るようで勇気が出ず、さきほどからスマートフォンは何度もスリープ画面になっている。
言うまでもないけれど、白川の両親はそれまでの貞操観念を放り出し、相手の気が変わらぬうちに早く早くと私を急き立てた。
そうしてお見合いからわずか十日で、私はさしあたっての荷物とともに鷹取蓮司の自宅マンションに送り込まれることとなったのだった。
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