29人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ
テレビ局の裏事情
「秋月先生の作品、ドラマ化するだろう。明日までに完成させて放送しよう」
「え!『ツンデレ嬢は他人のために魔法を使わない』は、時間的に無理です」
「言ったでしょう! 秋月先生の作品って! 『森のはずれのグリン』だよ。あれなら、ちょうど、夏休みの午前だし、子供向け番組だし、セットも倉庫にありそうだし、ほら、あの、ブルーやグリーンの板の前で、役者さんが演じれば、良いだけだろう。背景をCGでハメコミ合成するだけでしょう」
言ったでしょうって、聞いてない。イラッとするが、言い返せない。無表情にならないよう、日奈子は、顔の表情を緩める。
「あのー、個人的な意見ですが、明日の午前までに完成は、時間的に非常に厳しいと思います」
「もう決定したから、恨むなら県議会を恨んで。時間は関係ないね。私が新人社員だった頃は、『24時働きましょう』が、流行語大賞取ったんだよ。不眠不休で作ろう!」
栄養ドリンクのCMは、カメラマン研修で習っただけだ。生まれる前なので、リアルタイムでは見ていない。
「私の新人の頃は、何日休まず働いたが自慢になったんだよ。働き方改革で最近の若い者が羨ましい」
それは、羨ましいでなく妬ましいでは、思いながらも、初めて聞いた話のように頷いていた。佐藤が腕時計に視線を落す。
最初のコメントを投稿しよう!