テレビ局の裏事情

1/1
29人が本棚に入れています
本棚に追加
/121ページ

テレビ局の裏事情

秋月(あきづき)先生の作品、ドラマ化するだろう。明日までに完成させて放送しよう」 「え!『ツンデレ嬢は他人のために魔法を使わない』は、時間的に無理です」 「言ったでしょう! 秋月(あきづき)先生の作品って! 『森のはずれのグリン』だよ。あれなら、ちょうど、夏休みの午前だし、子供向け番組だし、セットも倉庫にありそうだし、ほら、あの、ブルーやグリーンの板の前で、役者さんが演じれば、良いだけだろう。背景をCGでハメコミ合成するだけでしょう」  言ったでしょうって、聞いてない。イラッとするが、言い返せない。無表情にならないよう、日奈子(ひなこ)は、顔の表情を緩める。 「あのー、個人的な意見ですが、明日の午前までに完成は、時間的に非常に厳しいと思います」 「もう決定したから、(うら)むなら県議会を恨んで。時間は関係ないね。私が新人社員だった頃は、『24時働きましょう』が、流行語大賞取ったんだよ。不眠不休で作ろう!」  栄養ドリンクのCMは、カメラマン研修で習っただけだ。生まれる前なので、リアルタイムでは見ていない。 「私の新人の頃は、何日休まず働いたが自慢になったんだよ。働き方改革で最近の若い者が(うらや)ましい」  それは、羨ましいでなく(ねた)ましいでは、思いながらも、初めて聞いた話のように頷いていた。佐藤(さとう)が腕時計に視線を落す。
/121ページ

最初のコメントを投稿しよう!