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蛇の褒め殺し
辰巳沢君は、目が鋭い。
何もしていなくても、睨んでいる……ように見える。
そして、口が悪い。
何もしていなくても、不機嫌に聞こえる。
学校中の皆が怯えてる。先生も少し怖がっている。
うさぎと呼ばれる亜米利さんも例外ではない。
亜米利さんは、うさぎと呼ばれるだけあって、臆病だ。今日も辰巳沢君の隣で、震えてる。
「今日は、9月2日だから出席番号二番。この問題、答えてみて」
亜米利さんが後ろの席の人が先生に当てられただけで、ビクビクしてる。成績は、悪くないはずなのに、しょっちゅう授業中、祈るように手を組んでいる。
演習問題の答えも聞かず、先生の解説も聞かず、お祈りしている。
辰巳沢君は、頬杖をついて亜米利さんを観察している。一番前の席で堂々と亜米利さんを視線で攻める。
「じゃあ、次。うさぎ」
あーあ。当たっちゃった。
クラスメイト全員が声に出さずとも同じ意見だった。
堂々としてれば、当てられないのに。
真っ赤な顔をして小さな声で、正しい答えを発表する亜米利さんは、あだ名の通りうさぎのように小さく弱く見えた。
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