CASE 2

36/46
211人が本棚に入れています
本棚に追加
/332ページ
「神谷さんにしか頼めねぇってのは、多分サクラが感じた通り、その魔法みたいな出来事のことだ。  するっと懐に入り込んでくるんだよなぁ、普段はあんな冷徹人間の癖してズルいよな」 そう言って遠くを見る彼は、昔の出来事でも思い出してるのだろうか。 その瞳がどこか寂しそうにも見えて、かける言葉が見当たらず、私は口を噤んだまま言葉の続きを待った。 「ウチは男女トラブルの依頼を受けることが多いんだよ、で男女間で既に手に負えないほど関係悪化してるケースがほとんどだ。けどな、神谷さんが間に入ることで、なんだかんだ丸く収まるんだよなぁ、コレが。 実際そういう口コミもあって、小さな希望を持ってココに来る人も多いんだよ」 「そうなんだ……」 ネットで検索しても全くヒットしなかった初日の出来事がふと過るけれど、所謂界隈では有名ということなのだろうか。 「それに大きな事務所じゃねぇから、基本はなんでもやる。……いや、違うか。法に触れなきゃ何やってもいいって訳じゃねぇけど、最終的に神谷さんが必要だと判断したものには躊躇なく手をつける。だから、基本何でもやるってよく言われるんだよな。 まぁそういうモンだから覚えとけ」 「……はぁ」 「加えてウチの特徴を話すなら、ホストか何かと勘違いしてる客も一定数いるな。初日のトメさんみたいな」 「ああ……そう考えると、私が働くことをよく思わない人もいそうだね……」 「ハハ、そうだろうな!  正直なところ、俺なんかが一緒にこうやって働けてんのも、スゲェことなんだけどなぁ……」
/332ページ

最初のコメントを投稿しよう!