プロローグ

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――母を探したい、って 今までにも、思ったことはある。 けれど、今の両親に申し訳なくて 結局、今まで本格的に動いたことはないし、 何の手掛かりもない。 だから、これは私の賭けだ。 両親には、海外に一人旅をさせて欲しいって嘘をついて初めて家を飛び出した私の、 最初で最後の賭け。 ハイボールをグイッと飲むと、胃の中がじんわり熱くなるのを感じる。 ひんやりしたテーブルに頬をつけると、思った以上に心地よいそれに、うとうとと眠りに誘われた。 「おい、飲みすぎるなよ。……ったく」 やれやれと声を発した彼を上目遣いで見上げて、感謝の眼差しを浮かべ、へらりと笑うのだった。 ――こうして、 私の神谷探偵事務所での生活が始まった。
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