CASE 1

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「孫の婿養子?――貴女の旦那、ですよね。トメさん」 ……え? 「……」 え?……えっ? トメさんの旦那候補って……、何!? 彼の意図は分からない。けれども向かいの彼女はというと、あろうことか今までとは比べ物にならない程にその白い肌を真っ赤に染めたのだった。 これは間違いなく照れている。 トメさん推定八十歳。現役二十代を凌ぐ乙女の照れである。 「もうっ全く、辞めんかね!さて、本題に入るかのう!」 プンプンと効果音が聞こえてきそうなほどに頬を膨らませ、早口で捲し立てつつ、チラチラと上目遣いの乙女。 一方、思わぬフラグの出現に、目を見開き棒立ちの私。 神谷さんの楽しげに笑う声が脳内に響き渡り、混乱を極める私は目を白黒させて。 ……ああ、そっかぁ!紫色ってセクシーな色気を感じますもんねぇ!? なんて無理やり自分を納得させようと口元に笑みを浮かべた時だった。 思い出したかのように、不意にこちらへ視線を向けた乙女は口を開いた。 「それはそうと……珍しく女子(おなご)がおると思うたら、随分とコワモテな子やのう」 そうしてその上品な顔を歪ませ、どこか勝ち誇ったようにフォフォフォ、と高笑いをしたのだった。 「……」 完全に、勝ち組と負け組の構図である。 彼の背後で目を見開き眉間にシワを寄せて口元に笑みを作る私は、一体どう見えたのか。 "コワモテ"という表現は、あながち優しい部類に入るのかもしれない。
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