CASE 1

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「んでもって、全く変じゃねえ。  ありゃただの営業トークって奴だろうがよ……」 奴は負傷した戦士の如く、力なく笑った。 先ほどの発言は彼の手慣れた(かわ)し方、所謂常套句なのだろう。 そう分かっても、腑に落ちないこの感情はなんだろうか。 「――それで、ご用件は?」 「ああそうじゃ。昨夜からペロが帰らんのじゃ。すまんが探してくれんかの」 そう言うと、彼女は申し訳なさそうに眉を下げた。 ――要は、飼い猫がいなくなった、ということらしい。
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