Red×King×Vampire

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 そう、こうして三人そろっただけでも奇跡なんだろう。何しろ敵の数はアタシたちの何倍もあったんだから。これだけでも良くやったよと言って称え合わなければならないのかもしれない。けど、けど! アタシにはレオを見捨てることなんてできない!! 「十分……いえ、五分。五分でいいのでアタシにください。五分経ったらアタシも捨てて二人で逃げてください。お願いします。アタシにレオを助け出すチャンスをください」  アタシは二人を交互に見て懇願した。少しだけで良い。少しだけ時間をくれればそれでアタシは満足する。どんな結果になろうとも、アタシは満足するから! 助けられそうな命を見捨てるのは嫌なんだ! アタシは誰も死なせたくない! 「よかろう。五分待つ。サンダージャック、援護してあげなさい」 「分かりました」 「ありがとうございます!」  決断すると彼らの行動は早かった。サンダージャックさんが素早く車から出る。フェリックスさんも車を出たのでアタシも後部座席から這い出した。  車から出ると低い音を立てて門がゆっくりと開いていた。隙間からいくつかの影が蠢いているのが見える。それが全て敵だと頭が認識した途端、怖くなってきた。 「策はあるのかね?」  フェリックスさんが腕まくりをしながら言った。色はないが逞しい腕が露わになる。サンダーさんは車の影に隠れて銃を構えている。  アタシはごくりと恐怖を飲み込んでから自信満々に答えた。 「正面突破の奇襲です!」  フェリックスさんの口の端が上がった。 「それは良い。存分にやってきなさい。ただし、五分だけだ」 「分かっています!」  アタシは素早く車の二メートル後方くらいまで後退した。胸に手を当て、ドクドク鳴っている心臓を落ち着けようと試みる。しかし、上手くいかなかった。敵の中に突っ込んでいくなんてホントは震えるほど怖い。けど、アタシはアタシの所為で命が零れていくのには耐えられない。  大きく息を吐き、アタシは強く地面を蹴った。地面を走る。勢いを殺さないように車の上に飛び乗る。そしてアタシは飛び上がり、塀を蹴った。  眼下に十を超えるメイドさんたちが蠢いているのが見えた。何人かはアタシを見上げ、何人かは開いた門の間に身体を滑り込ませようとしている。
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