Play×Tag×Vampire

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「人間は何も知らないんだな」  彼が馬鹿にしたように言う。吸血鬼の常識が人間も周知の事実とは限らないんだよ! 「機会があったら教えてやっても良いが、今はデインを見ていろ」  デインを見ていろって、すごい量のコウモリになったあの人を? 全部把握しろってこと? 無理! すでに何匹かいなくなっていてもおかしくない。まぁもとの数が分からないからいなくなっているかも定かではないけど、ホントにどう見ていればいいのか分からない。 「走るぞ」 ぐんっ!  瞬間、身体が降下したと思うと重たい空気に押される感覚がした。 「ぅあ!」  男の子が加速したんだ! それも尋常じゃない速さで。  周りの景色が新幹線の中から見ているようなくらい飛ぶように過ぎていく。いや、もう後ろのコウモリなんかすごく遠くにいて追いついてこられそうもないんだけど。  しかし不思議なのはすごい速さで走っていて、しかもすごく遠くて暗いのにコウモリの姿が見えたことだ。アタシの目はどうしてしまったのだろう。 「ひぐっ!」  鼻ではしにくい息を、口を開けてしようとしたがうまく開けられなかった。  苦、しい……。  肺に空気が入らないこともすごい風圧に押されている窮屈さも、アタシを苦しめる。しばらく息をするのを我慢していたがいよいよ我慢できなくなり、アタシは彼の襟元をぐっと掴んで顔を胸に埋めた。冷たくて硬い胸の中、目を閉じて集中すると少しだけ息が楽になる。 「どうした?」  声に、答えられない。すると男の子がスピードを落としてくれたのが分かった。身体が浮かび上がる感覚がしたから、きっとまたあの高く跳ぶ上下運動に切り替えたんだろう。その御陰で息が出来るようになった。ただ顔を胸に押しつけていただけのアタシを気遣ってくれたのだろうか。そうだとしたらこの人、やはり思ったより怖い人ではないのかもしれない。 「どうかしたのか?」  顔を上げると不思議そうな顔をした彼が覗き込んでいた。ホント、最初の恐怖は何だったのだろう。この表情を見ると普通の人と何も変わらないと思う。むしろ普通の人より美形だから目の保養になる。 「速すぎて息が出来なかっただけ」  彼は眉をピクリと動かした。
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