Red×King×Vampire

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 アタシは呟いて祈るような気持ちで強く地面を蹴った。途端、身体が浮き上がり、気がついたらアタシは三メートルはあろうかという塀を飛び越えて森の木の枝に掴まっていた。  自分で行ったことなのに自分が一番驚いてしまい、アタシはしばらく茫然と木の枝に掴まっていた。 「そんなっ敷地の外へ逃げたわ!」 「ブランボリー様に報告を!」  メイドさんたちの叫び声で我に返り、アタシは腕に力を入れて枝によじ登った。それから屋敷の方を振り返り、メイドさんたちが四方八方に散っていくのを確認した。急がないと追手が外まで来る。アタシは動物のように木から木へと飛び移って屋敷の門を目指した。門の前には車があるはずだ。  案の定、門の前に乗ってきたスポーツカーが止まっているのが見えた。スポーツカーの上にはサンダーさんが乗っていて、腕には大きな銃を抱えている。たぶんライフルとかそういうやつだ。 「サンダーさん!」  木から飛び降りて彼を呼ぶと、サンダーさんは目を大きく開いてとても驚いた顔でアタシを見た。上から下にアタシを見て、もう一度確認するように下から上にアタシを見る。  驚くと思う。アタシだって驚いている。まさかホントにこうして逃げられるとは思っていなかったから。ホントに奇跡だと思う。 「なんとなんと! すごい格好ですね!」 「そっちかー!!」  しまったそっちだったか! 「ほうほうそれは赤の王の趣味ですか!? 良いですね良いですね! 私は良いと思いますよ! 胸元のレースが豪華なのでホノカの小さな胸が」 「殴りますよ!?」  半泣きの状態でサンダーさんを睨んでやった。やめてほしい! 必死で逃げてきたのにこの仕打ち! 服装には触れないでほしい! また恥ずかしくなってくるじゃないか! 「自分でどうにかしろってサンダーさんが言ったから頑張って逃げてきたのに! 褒めてくださいよ!」  抗議するとサンダーさんは目を細めた。 「本当に一人で帰ってくるとは思いませんでした。その血はホノカのものではないようですし、思っていたよりホノカはタフみたいですね」  なんだかそれってアタシが帰ってこないと思っていたように聞こえるんだけど、気のせいだろうか。
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