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「ホノカ、先に車に乗っていてください。今、マスターに合図しますから」
そう言ってサンダーさんは大きな銃を構えた。右手が銃の引き金を引く。瞬間、銃口から金色の筋が見えたかと思うと突然凄まじい爆発音が聞こえた。
「な、なんですか!?」
ビックリして問いかけると、サンダーさんは銃を構えたまま答えてくれた。
「撤退の合図として屋敷をぶち抜いたんですよ」
「それ合図なんですか!?」
めちゃくちゃだな!
「さぁさぁホノカ。すぐにマスターが帰ってきますから車に乗ってください」
促され、アタシは突っ込むのを止めて車に乗り込んだ。他のみんなが乗りやすいように後ろの席へ移動する。そうしてしばらくじっと待っていると、本当にすぐ車の両方のドアが開いて二人が乗り込んできた。運転席にサンダーさん。助手席にフェリックスさんだ。良かった、フェリックスさんは無事みたいだ! 見たところ大きな外傷もないみたい。
「無事で良かったですフェリックスさん!」
「ホノカ君も。……その血はホノカ君のではないようだね。その格好は」
「触れないでください」
何か言われる前に断っておいた。何度も触れられたらアタシのメンタルが粉々になる。
「ところでレオは? まだなんですか?」
問いかけるとフェリックスさんは暗い顔をした。アタシはその表情に嫌な予感を覚えた。
「彼は私を逃がすために残ってくれた」
頭の先からさっと血の気が引いた。
「そんな! 助けに行かないと!」
「いけないホノカ君」
身を乗り出そうとしたアタシの手に手を重ね、フェリックスさんは首を振った。
「彼は私に行けと言ったのだ。自分のことは顧みるなと。私が逃げる時間は稼ぐからと。友の言葉は聞かねばならない。友の言葉を私は信じた。だからこうして逃げてこられたのだ。私たちの生還が彼の最後の願いだ」
この人は何を言っているんだ? 焦燥の中、アタシの頭は混乱していた。
確かにレオはそう言ったんだろう。「オレが時間を稼ぐからご主人サマは逃げて! オレのことは気にしないでいいから! みんなで逃げるんだ!」そんな言葉がレオの声で、頭の中で容易に再生される。レオならそう言う。そう言ってくれるだろう。でも、それを真に受けてレオを置いてきたのか? そんなのあんまりだ!
「レオを置いていくなんてできません! そんなの、そんな言葉、信じて、じゃぁねなんて、アタシは言えません!」
「ホノカ。ホノカ、仕方のないことです。諦めてください。こうしてマスターとホノカが逃げられただけでも良いでしょう。もし、もしここで私たちも共倒れすることになれば、レオの犠牲は無駄になってしまいます。彼の覚悟を無下にするのですか? それでも良いのですか?」
サンダーさんは目を細めている。
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