Red×King×Vampire

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ドパッドパッ バキバキッグシャッ  嫌な音が聞こえてきてアタシは彼女たちを見るのをやめた。たぶんフェリックスさんやサンダーさんがメイドさんたちをやっつけている音だ。何人かは死んでしまうかもしれない。アタシがレオを助けに戻るという選択をした所為で、もっと多くの命が失われるかもしれなかった。  アタシの所為で大勢が死ぬ。  その事実に気づいてしまい、喉が痙攣した。ダメだ。これはアタシが決めたことだ。アタシは突き進むしかない。今は、考えるな。自分に言い聞かせる。  門から十メートル程離れたところに着地したアタシは頭から地面に突っ込みそうになりながらもなんとか体勢を整え、お屋敷を目指して走った。  すごく大きなお屋敷だ。フェリックスさんのお屋敷よりも大きい。  門からお屋敷までは石畳の一本道だった。百メートルくらいだろうか。何人かメイドさんとすれ違ったけれど、お屋敷に戻っていく分は良いのか、誰もアタシの行く手を阻もうとはしなかった。  ものの数秒でお屋敷についたアタシは開けっ放しになっていた玄関扉から飛び込んだ。アタシに気づいた十人くらいのメイドさんたちが一斉に赤い目をアタシに向ける。メイドさんたちはみな手に剣や銃やら槍やらの武器を持ち、弧を描いて並んで立っていた。  異様な空気。部外者を見る目。それがアタシを認識した途端、嫉妬に燃えた。無数の赤い瞳に押しつぶされそうだった。  気圧されながら目を動かすと、メイドさんたちの間から彼女たちが囲んでいるものが見えた。  レオだ! レオがいた。大きな四角いホールの真ん中辺りで仰向けに倒れている。その、頭を、ブランが黒い革靴で踏んでいた。それに気づいた途端、頭にカッと血が上るのが分かった。身体も熱くなってくる。 「レオ!」  アタシは叫んで走った。メイドさんたちを掻きわけ、飛び出す。 「ブラァァァン!」  ブランが顔を上げた。表情の無い虚ろな顔だった。赤い目だけが獣のようにギラギラと光って見えた。 「ホノ、カ……」  唇が小さく動いた。  途端、胸が苦しくなった。けれどアタシは床を蹴り、拳を振り上げた。
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