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「!?」
捕まれている手を引っ張られ、アタシはブランの方を向いた。
目の前に真っ赤な瞳があった。唇には柔らかいものが押しつけられている。アタシはまた、ブランに口づけされた。しかし今度は様子が違っていた。生暖かい液体が唇の間から流れ込んできたのだ。
鉄の匂いがする。酸っぱくてしょっぱくて舌の奥がキーンとする。
血、だ……!
「んんん!!」
アタシはブランの胸を力いっぱい押して離れようとした。
血、血なんて飲みたくない! やめて!
アタシは力いっぱい暴れようとしたが、後頭部を手で押さえられ、腰にも腕を回されて暴れられなかった。全く動けなくなったところに、上から覆い被さるようにブランが身体を動かしたのでアタシは自然と上を向いた。
口の中に溜まっていた液体が喉の奥へ移動した。
「んぐっ」
耐えられなくなった喉が液体を飲み下す。あぁ、アタシ、また血を飲んでいる……。
嫌だ。最悪だ。アタシはブランの腕を掴んで爪を立てた。けれどもブランは全く動じなかった。
瞬きすると涙が流れた。アタシは、ゆっくりと、口の中に溜まった液体を飲み干した。
ブランの唇が離れる。唇を離したブランはぺろりとアタシの唇を舐めてからうっとりとした顔を見せた。
「ホノカ。ホノカは僕のことが好き?」
嫌いだ。
「……好き」
自分の唇から零れた言葉に驚かされた。アタシは、こんなヤツ、嫌いなのに。
「僕も好きだよ。ホノカは僕のことが大好き?」
大っ嫌いだ。
「大好き」
「僕も大好きだ。ホノカは僕のことを愛している?」
愛してなんかない。
「愛、してる」
ブランが満足そうに微笑んだ。
なに、これ。おかしい。こんなヤツ好きじゃないのに、なんだろう。否定できない。アタシは混乱した。
「僕も愛している。おいでホノカ。夜が明けるまで僕とお喋りしよう?」
ブランの腕がアタシを横抱きにした。アタシは自分の身体に何度も暴れて逃げるように指令を出したけど、全て却下されてしまった。それどころかアタシの腕はブランの首に回され、彼に抱き着いたのだった。
変だ。おかしい。そう思いながらも、アタシはブランの肩に頭を預けていた。何の音もしない胸が心地いい。
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