Play×Tag×Vampire

12/49
前へ
/134ページ
次へ
バチバチバチッ  そこで突然彼の剣がアイゼンバーグの手を拒絶した。刃のような強い風が剣から発せられたと思うとそれは刺さっていたアイゼンバーグの腕に移り、皮膚を豪快に裂いた。バッと花が咲いたように赤いものが飛び出し、アイゼンバーグの手は剣から抜ける。アタシはその光景を見た瞬間、吐き気が込み上げてきて手で口を押さえて下を向いた。瓦を染めた赤も見ないように目も閉じる。  ダメだ、ホントに吐いてしまいそうだ。血の匂いがきつい。それにもう、見ていられない。  アタシがそうして苦しんでいる間にも戦いは続いているらしく、骨と骨がぶつかる音や金属の音、瓦が割れる音が聞こえてくる。このまま下を向いていれば少しずつ気分が良くなりそうだったが、気が気じゃない。なぜか二人の戦いがどうなっているのか気になって仕方がないのだ。もし、そう考える自分がいる。  もし? もしってなんだろう。もし、アイゼンバーグがひどい怪我をしたら? アイゼンバーグが彼に殺されてしまったら……?  そこまで考え、アタシは素早く目を開けて彼らの姿を探した。目に入ったのは血みどろになったアイゼンバーグと腹に穴の開いた状態で剣を構えている男の人だった。二人とも普通なら倒れて動けなくなっているほどの怪我を負いながらも戦意喪失していない。怖くて、気分が悪くて、見ていられない。そのはずなのに二人が立って戦っていることにホッと心をなで下ろしている自分がいる。  なぜ。分からない。アタシはおかしくなってしまったのだろうか。  踏み込んだ男の人が剣でアイゼンバーグの横腹を切りつけた。アイゼンバーグは自分の腹に食い込んだ剣を素手で掴み、すぐさま足を振り上げる。ゴキッ、剣を握っていた男の人の腕があらぬ方向に折れたのが分かった。アイゼンバーグは彼の手から剣を抜くと素早く接近し、彼の首を掴んでそのまま後ろに倒した。男の人の身体が屋根に埋もれ、アイゼンバーグはそこへいつの間にか構えたキラリと光る彼の剣を突き立てた。  ぐしゅっ。躊躇無く、剣が、胸に刺さり、彼は動かなくなった。ホントに、ピクリとも。  あまりに衝撃的すぎて今まで普通に息をしていたのに、アタシは息の仕方を忘れてしまった。  あの人、死んでしまったのか? アイゼンバーグが殺したのか? アタシの目の前で、たった今!? ヒューッヒューッと、どこかから空気の抜ける音がする。思わず口元に持ってきた手が震えている。 「さて、どこかで血を洗い流さないとな」
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加