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またいつの間にかアイゼンバーグはアタシの傍に来ていた。きつい鉄の臭いをさせて、真っ赤に染まった姿で、アタシの横にいる。
「行くぞホノカ」
アイゼンバーグはアタシを抱きかかえようと真っ赤な手を伸ばしてきた。その手が、あの人を殺したんだ。命を、奪ったんだ。
「嫌!」
反射的にアタシは彼の胸に両手を突っ張って拒んだ。するとぬるりとした感覚が両手を包み込み、アタシは目を見開いてその手を突き出した胸を見た。深い切り傷が、肉を抉っている。アタシの指は、パックリ割れた肉の間に触れていた。急いで手を引っ込めると自分の手が真っ赤に染まっているのが目についた。まるでアタシが殺したみたいに。血、血が、すごい量の血が……!
「血が怖いのか?」
ゆっくり視線を這わせるとニヤリと笑う彼がいた。青い目がギラついている。
理解できなかった。こんなにも傷を負って血を流しているのに、人を殺した後だというのに、笑っている。
アタシがフリーズしている間に、アイゼンバーグはアタシをお姫様抱っこして空に向かって跳んだ。
それからどこかの廃ビルに着き、地面に下ろされるまでアタシは放心状態だった。気絶していたわけではない。彼の冷たい胸と血の臭い、それから上下運動のせいで何度も吐きそうになったことを覚えているから。でも、ただ、それだけ。
アイゼンバーグは地面に下ろされても足に力が入らなくてへたり込んでしまったアタシの腕を引っ張り、立たせようとする。しかしアタシはそれに答えられそうもなかった。自分の身体ではないみたいに全く力が入らないのだ。
「どうした? 俺のことが怖いのか?」
また、ニヤリ顔。その顔がなぜかすごくアタシの怒りを煽り、血がカッと頭に上ってきた。アタシはアイゼンバーグを下から睨み、大声で叫んだ。
「なんで、なんで笑っているの? 誰かを殺した後にどうして笑えるの? おかしいでしょ!」
アイゼンバーグは少し目を見開いて驚いたような顔をしてから無表情になった。
「そんなに簡単に人を殺して良いの!? 良くないでしょ! アタシ、君みたいな人嫌い、嫌だ!」
かつてないほど大きな声を出したためアタシは息切れした。こんなに怒るのも初めてで、なんだか自分が自分でないようだった。だって、だっておかしすぎるのだ。どうしてそんなにも普通に笑えているのか分からない。いや、普通じゃない。笑っていられるなんて普通じゃない!
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