Play×Tag×Vampire

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「なんだ、不満なのか」 「いや、そうじゃないけど……」  いきなり笑うのを止めるアイゼンバーグ。その顔はやはり嘘を言っているようには見えなかった。つまりあの人は生きている? じゃぁ、それじゃぁ……。 「良かった」  また足の力が抜けてへたり込んでしまった。あの人、生きているんだ。全然そのようには見えなかったけど、今は信じられないことが多すぎて脳が麻痺しているらしい。彼は生きているのだと、彼の言葉を信じ込んでいる。  あぁ良かった。あの人は死んでいないのだ。アイゼンバーグは殺していないのだ。沸き上がっていた怒りが徐々に収まっていく。 「良かったとは、また変わったことを言う。別に親しくもないホノカが心配するようなことではないはずだろ」  アイゼンバーグはゆったりとした足取りでアタシの前まで来て、ぐいっと腕を引っ張った。身体が浮き上がる。しかし、それでも立ち上がれないアタシに少しだけ眉を寄せてそのまま歩き出した。どうやら引きずっていくことに決め込んだらしく、お構いなしに引きずっていくので靴がすり減りそうだった。ガガガガガガッと不愉快な音がしている。流石にこれではいけないと思い、アタシは頑張って足に力を入れて立ち上がった。その間も彼は進んでいるので少しもつれながらではあったが、立ち上がり、今は一応歩いている。相手の足が速すぎることもあってまだ若干引きずられているが。 「確かに親しくはないけど、でも目の前であんなことがあったら心配する。当たり前でしょ」  遅れて答えるとアイゼンバーグは少しだけ不思議そうな顔をして振り返った。しかし何も言わずに前を向いてしまう。  よく、分からない。アタシがあの人を心配しているのは人間社会では比較的当たり前だろうが、彼の世界では違うらしい。考え方が根本的に違うのだろうか。 トンッ  考えていたらアイゼンバーグが立ち止まっていることに気がつかず、背中にぶつかってしまった。少しだけしっとりした感覚がアタシの顔に伝わる。そうだこの人、今立っているのが不思議なくらいひどい怪我をしていたのだった。いつの間にか血の臭いに慣れてしまっていたので忘れていた。こういう時、適応能力の高い人間というものが嫌になる。 「さて、早く洗い流さないとな。血の臭いに誘われて面倒な奴が来る前に」  アイゼンバーグは呟いてアタシの腕を放し、ボロボロになったシャツを脱ぎ捨てた。真っ赤な背中が露わになり、少しだけ肺がギュッとなる。臭いに慣れても視覚的には慣れていないらしい。
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