Play×Tag×Vampire

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「やっと見つけたぜ!」  闇の中で誰か別の声が聞こえ、うっすらと目を開けてみた。声のした方を見てみると蛍光灯に照らされて濃い紫の髪の青年の姿が浮かび上がっていた。距離は近くも遠くもないが、顔を確認出来るほどではない。 「ちっ追いついたか」  目の前の白髪の男の子がアタシに向けた威嚇の声とは違う、苛立ったような声で言った。アタシを掴んでいる手も緩み、足が地面に着く。苦しくもなくなった。  どうやら彼とあの人は知り合い、らしい。ということは巧くいけば逃げられるかもしれない。明らかにあの人の登場で気が逸れている今がチャンスだ。ナイスタイミングで来てくれたな、紫頭のお兄さん! 「こんなゲームさっさと終わりにするぞアイゼンバーグ!」 「お前に捕まるわけがないだろう、デイン」  男の子の手が緩んだ! アタシはその瞬間を逃さず、両手で彼の手を払いのけてすぐさま走り出した。  逃げられる。……はずだったのに! 「じゃぁなデイン。俺はお前らには捕まらない」  あろう事か男の子が易々とアタシの腕を掴み、ぐいっと引っ張ってきたので逃げられなかった。すごい力に引き寄せられてバランス感覚を失ったアタシはそのまま彼に掬い上げられ、いわゆるお姫様抱っこされる羽目になる。  いや、もう全く訳が分からない! 「ちょ、ちょっ!」  アタシが抗議する前に男の子は地面を軽く蹴って高く跳んだ。ぐんっと身体が下に押さえつけられるような感覚がして、ふと下を見てみると、二階建ての屋根が、見えた。 「うおぉぉぉいっ!」  彼に対する恐怖やら緊張やらいろいろな気持ちをすっ飛ばして高いという恐怖だけがアタシの中を埋め尽くした。  アタシは男の子の服を力一杯掴み、何としてでも離れまいとした。さっきまではこの人から逃げなきゃ死んでしまいそうな雰囲気だったけど、むしろ今はこの人から離れたら確実に死ぬ! 死んじゃうから! 「どうしたお前。怖いのか?」  頭の上から彼の声が聞こえる。幾分か優しくなったような気がするその声にアタシは激しく首を縦に振って答えた。顔は彼の冷たい胸板に押しつけたまま。目を開けていられないし、声も出ないんだよちくしょう!
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