Play×Tag×Vampire

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「デインが来る。早くしろ」  あぁぁぁー。アタシは仕方がなく彼の命令を聞いて目をつぶった。さっきまで命の危険を感じていた相手に対して無防備すぎるかもしれないが、不思議と初めて見た時の恐怖は消えていた。初めの怖ろしいイメージと違って結構話せる人だったからだ。  それに、何よりも瞳が綺麗だった。アタシの本能はまだ逃げろと言っているかもしれないが、もう聞こえない。  瞼の辺りに何かが触れ、アタシの目は燃えるように熱くなった。心臓のようにドクドクと脈を打っている。  何だ、何が起こったんだ?  堪らなくなって目を開けるとニヤリと笑っている彼の顔が見えた。 「これで見えるはずだ」  ホントに見えるようになっているのだろうか。確かに何かが起こったようではあるが、熱いこと以外に変わった様子はない。別に見えるようになっていなくても良いけど。  少し訝りながら彼を窺っていると、後ろで突然赤色のものが二つ光るのが見えた。あのお兄さんだ! 「後ろ!」  アタシが叫んだ時にはもう、お兄さんが彼に殴りかかっていた。  当たる! そう思って目を閉じた。 「見えているな」  余裕のある男の子の声に瞼を上げてみると、男の子はお兄さんが突き出した拳を避けて腕を左手でがっしり掴んでいた。彼の握力は相当強いらしく、指が腕に食い込んでいる。 「しっかり目を開けていろ」  口角がさらに吊り上がる。アタシが彼の不適な笑顔に目を大きくしていると、彼はいきなりお兄さんの腕を引っ張って前に投げた。彼よりも大きいお兄さんの身体が勢いよく飛んでいき、凄まじい音を立てて地面にめり込んだ。片手でって、おい! あんな状態になってお兄さんは大丈夫なのか……?  少し心配しながら見ていると、お兄さんがむくりと起き上がって頭を振った。そうしてすぐこちらに向かって地面を蹴った。 「ちっ」  男の子が舌打ちをする。  あっと言う間に目の前まで来たお兄さんが右腕を振り上げ、アタシの目の前の男の子に殴りかかる。しかし男の子は身体を揺らしていとも簡単に避ける。すぐに避けたところにある頭に左拳が放たれるが、それもひょいと首を傾げるように避ける。続いてお兄さんは左足を高く振り上げた。しかしそれも最低限の動きで避ける。少しずつ後退しながら繰り広げられる戦いを見て、アタシは固まっていた。闇の中の二人の目がギラギラ光っていて、とても怖ろしかったからだ。
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