Red×King×Vampire

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「面白いな。ホノカみたいな子は初めてだ」  そうでしょうよ! ネグリジェの似合わない一般庶民なんて会ったことないんだろう!! 王様だもんね! このお屋敷にいた女子はみんな可愛いか美人だったもの!! 「もっとホノカと近くなりたいよ。手を下げてこっちを見て。目を見て話してほしい」  アタシは指の間からちらとブランを見た。ブランは銀の格子の向こうからアタシをじっと見つめていた。瞳が楽しそうに笑っている。唇の端が満足そうに上がっている。  アタシを捕まえることに成功して満足しているんだ。  アタシは籠の中にいる。人一人が寝転がってもまだ少し余るくらいの大きさの、大きな大きな丸い鳥籠の中だ。着替えた後、くりくりの金髪で赤い目の可愛い女吸血鬼メイドさんに入るように言われて自分から入りはしたのだが、入りたくはなかった。しかし、逆らえなかったのだ。メイドさんの純粋な殺意のこもった赤い目で睨まれていたら誰だって従うだろう。むしろあれだけの殺意をビシバシと浴びせられたにも関わらずこうして生きていられることが奇跡と言っても良いだろう。  そういうわけでアタシは閉じ込められている。鳥籠の置いてある部屋には窓はなく、通気口だけがあって壁も床も白い。視界の中で銀の鳥籠と、ブランの黒いズボンと黒髪と赤い目だけが色を持っている。  なんとかしてこの場所から逃げ出さなくてはならない。すごく恥ずかしくて死にそうだけど、それでずっと悩んでいられない。アタシは彼らの手を借りずに自力で彼らに合流しなければならないのだから。フェリックスさんとレオ、それからサンダーさんがどうなっているのかも気になる。無事でいてくれることを願うばかりだが……。 「アタシがブランの目を見て話したら、ここから出してくれますか?」 「そうだね。出してあげても良いよ」  にっこり、余裕の笑みである。ホントに出してくれるとは思えないが、顔を隠して話していたらこちらが優位になることはない。まぁ鳥籠に入れられている時点でアタシが優位になることはないのだろうが、少しでも付け入る隙を見せてはいけない気がするのでここはなんとか踏ん張らねばならない。 「じゃ、ちゃんと目を見て話します」  顔から手を離し、ついでに立ち上がってブランを見た。  目線が同じだ。鳥籠は床よりも底を上げてあるので、実際はブランの方がアタシより頭一つ分くらい大きいのだろう。 「礼儀正しいね。本当のホノカは僕の目を見て話してくれる良い子のようだ。フェリックスが入れ知恵したんだろう。フェリックスは余計なことをしてくれたものだ」  ふぅと小さく息を吐いてみせるブラン。すると甘い香りが漂ってきて、アタシは思わず顔をしかめた。良い匂い、なんて思ってしまった。
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