Red×King×Vampire

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「まぁ良い。今は彼のことよりもホノカとの時間を優先させよう。ホノカ、僕はホノカに聞きたいことがたくさんあるんだ。ホノカの主人のこと、それからどんな血が好きなのかということ。もっともっとたくさんのことを。夜通し話しても足りないくらい、僕はホノカのことが聞きたい」  すごく魅力的な声。綺麗な顔が綺麗に笑っている。吸い込まれてしまいそうなくらい綺麗な、宝石のような赤い瞳がアタシを映している。  ドクンドクンと心臓がうるさくなってきた。頭の中がぼーっとしてくる。 「まず聞きたいのは、単純なことだよ」  くすり、とブランが笑った音がした。 「ホノカは僕のことが好きかな? 僕はホノカのことが好きだよ」  アタシは口を開いた。 「アタシは……好き……じゃないです」  ブランは驚いたような顔をした。真っ赤な目を大きくしてアタシを見ている。  好かれていると思っていたのか? アタシは首を傾げた。  ブランは自分に自信があって当然アタシにも好かれていると思っていたんだろうけど、残念だったな。顔が綺麗だし声も良いし時々ぼーっとしてしまうくらい魅力的なのは認めるけど、だからといって好きというわけではない。ケーキでも何でも、見目が良ければ自分好みというわけではない。結局見た目はそこそこでも味が美味しいケーキを買ったりするのだから、結局は中身なのだ。ブランは決して中身が魅力的ではないと断言できないけど、むしろ魅力的な部類なんだろうけど、残念ながらアタシの好みではなかった。  だってブランが喋ると全身が痒くなってくる気がするんだもの! 「好きじゃない? そうか……こんなこと、初めてだ」  ブランは唇に手を当てて考え始めた。なんだか思ったよりダメージを与えることに成功したらしい。やった! なんとかなるかもしれない! 「僕は今まで女性に好きじゃないと言われたことがない。別種の吸血鬼にだって僕は好かれるんだ。女性は僕のことを拒絶出来ない。おかしいな。ホノカは女の子なのに。こんなこと、初めてだ」  なんかちょっと暗にアタシは女じゃないと言われているようでムカッときた。 「みんながみんなブランのことを好きなわけじゃないんです。残念でしたね」  ふんっと鼻を鳴らして言ってやった。ざまあみろ、そんな気持ちだった。しかしすぐにアタシは後悔させられることになった。 「え!?」  ぼろぼろぼろっとブランの両の目から大粒の涙が零れたのだ。アタシはぎょっとした。  な、泣いた!? アタシ泣かした!? そんなに強く言ってないのに!?
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